温泉は、どんな場所にあるのか
温泉の点だけを数えて「4 割が火山岩の上にある」と言っても、それが温泉の性質なのか、 「人が観光地として登録する場所」の性質なのかは分かりません。 そこで同じ観光資源データの、温泉ではない点を対照に置きました。 都道府県ごとに温泉と同じ数だけ無作為に選んでいます(seed 20260907)。 調査・提出経路・県の構成はそろうので、残る違いは地理環境の違いに寄ります。
温泉 1320 点、対照 1320 点。 差が偶然でないかは、温泉/対照のラベルだけを 2000 回入れ替えて χ² を作り直し、観測値がその分布のどこに来るかで見ています。
これは共起の記述であって、温泉ができる原因を示すものではない
地図には Wikidata から採った温泉の層も出していますが、この集計には使っていません。対照群は同じ観光資源データの中から選ぶことで 「人が登録した場所」という偏りを打ち消しています。出所の違う点を混ぜると、その揃えが崩れるためです。
いちばん大きな差
軸ごとに、温泉のほうが多い区分と少ない区分を、差の大きい順に一つずつ出しています (数字は集計から取り出したもので、書き写していません)。
| 軸 | 温泉に多い | 温泉に少ない | 効果の大きさ |
|---|---|---|---|
| 地質(大区分) | 火成岩(+3.39 pt) | 堆積岩(-4.18 pt) | V = 0.0698 |
| 標高 | 200〜500 m(+8.98 pt) | 〜200 m(-12.07 pt) | V = 0.1625 |
| 傾斜 | 3〜8 °(+7.64 pt) | 〜3 °(-14.37 pt) | V = 0.1482 |
| 最寄りの活火山までの距離 | 〜10 km(+2.88 pt) | 50〜100 km(-8.71 pt) | V = 0.1194 |
| 最寄りの河川までの距離 | 〜0.1 km(+20.38 pt) | 0.3〜1 km(-14.7 pt) | V = 0.24 |
| 植生自然度 | 7〜8(二次林)(+8.5 pt) | 1〜2(市街地・農耕地)(-14.21 pt) | V = 0.1632 |
| 最寄りの湖沼までの距離 | 3〜10 km(+3.08 pt) | 10〜30 km(-2.42 pt) | V = 0.057 |
いちばん効果が大きいのは最寄りの河川までの距離(V = 0.24)、 いちばん小さいのは最寄りの湖沼までの距離(V = 0.057)です。 V が 0.3 に届く軸はひとつもなく、どの軸でも分布は大きく重なっています。 「温泉はこういう場所にある」と言い切れるほどの偏りではありません。
このうち最寄りの湖沼までの距離は、 ラベルを入れ替えた分布の中に観測値が埋もれており (p = 0.06847)、差があるとは言えません。出なかったことも結果として載せています。
地質(大区分)
シームレス地質図V2 の大区分。地点の凡例をそのまま使う
χ² = 12.506(ラベルを入れ替えたときの平均 4.015)・p = 0.01599・Cramér の V = 0.0698(V が小さいので、差はあっても分布の重なりは大きい)
この軸の値が取れなかった点: 温泉 24 点 / 対照 50 点。 集計から外しています(埋めていません)。
数の表
| 区分 | 温泉 | 温泉 % | 対照 | 対照 % | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 堆積岩 | 804 | 62.04% | 841 | 66.22% | -4.18 pt |
| 火成岩 | 344 | 26.54% | 294 | 23.15% | +3.39 pt |
| 付加体 | 103 | 7.95% | 74 | 5.83% | +2.12 pt |
| 変成岩 | 34 | 2.62% | 41 | 3.23% | -0.6 pt |
| その他 | 11 | 0.85% | 20 | 1.57% | -0.73 pt |
標高
国土地理院の標高タイル(z14)を読んだ値
χ² = 69.408(ラベルを入れ替えたときの平均 3.979)・p < 0.0005(2000 回の入れ替えで一度も観測値に届かなかった)・Cramér の V = 0.1625
この軸の値が取れなかった点: 温泉 1 点 / 対照 10 点。 集計から外しています(埋めていません)。
数の表
| 区分 | 温泉 | 温泉 % | 対照 | 対照 % | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〜200 m | 757 | 57.39% | 910 | 69.47% | -12.07 pt |
| 200〜500 m | 346 | 26.23% | 226 | 17.25% | +8.98 pt |
| 500〜800 m | 140 | 10.61% | 92 | 7.02% | +3.59 pt |
| 800〜1200 m | 69 | 5.23% | 49 | 3.74% | +1.49 pt |
| 1200 m 以上 | 7 | 0.53% | 33 | 2.52% | -1.99 pt |
傾斜
標高タイルから Horn 法で求めた傾斜
χ² = 57.535(ラベルを入れ替えたときの平均 4.047)・p < 0.0005(2000 回の入れ替えで一度も観測値に届かなかった)・Cramér の V = 0.1482
この軸の値が取れなかった点: 温泉 2 点 / 対照 18 点。 集計から外しています(埋めていません)。
数の表
| 区分 | 温泉 | 温泉 % | 対照 | 対照 % | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〜3 ° | 497 | 37.71% | 678 | 52.07% | -14.37 pt |
| 3〜8 ° | 450 | 34.14% | 345 | 26.5% | +7.64 pt |
| 8〜15 ° | 244 | 18.51% | 169 | 12.98% | +5.53 pt |
| 15〜25 ° | 81 | 6.15% | 63 | 4.84% | +1.31 pt |
| 25 ° 以上 | 46 | 3.49% | 47 | 3.61% | -0.12 pt |
最寄りの活火山までの距離
気象庁の活火山 111 との球面距離。近いことは火山性であることを意味しない
χ² = 37.659(ラベルを入れ替えたときの平均 5.076)・p < 0.0005(2000 回の入れ替えで一度も観測値に届かなかった)・Cramér の V = 0.1194
数の表
| 区分 | 温泉 | 温泉 % | 対照 | 対照 % | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〜10 km | 81 | 6.14% | 43 | 3.26% | +2.88 pt |
| 10〜20 km | 163 | 12.35% | 134 | 10.15% | +2.2 pt |
| 20〜30 km | 146 | 11.06% | 134 | 10.15% | +0.91 pt |
| 30〜50 km | 326 | 24.7% | 289 | 21.89% | +2.8 pt |
| 50〜100 km | 266 | 20.15% | 381 | 28.86% | -8.71 pt |
| 100 km 以上 | 338 | 25.61% | 339 | 25.68% | -0.08 pt |
最寄りの河川までの距離
国土数値情報の河川データ全 286,437 区間との距離(地図に描いている 1 級河川だけではない)
χ² = 152.118(ラベルを入れ替えたときの平均 3.914)・p < 0.0005(2000 回の入れ替えで一度も観測値に届かなかった)・Cramér の V = 0.24
数の表
| 区分 | 温泉 | 温泉 % | 対照 | 対照 % | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〜0.1 km | 557 | 42.2% | 288 | 21.82% | +20.38 pt |
| 0.1〜0.3 km | 404 | 30.61% | 424 | 32.12% | -1.52 pt |
| 0.3〜1 km | 295 | 22.35% | 489 | 37.05% | -14.7 pt |
| 1〜3 km | 61 | 4.62% | 107 | 8.11% | -3.48 pt |
| 3 km 以上 | 3 | 0.23% | 12 | 0.91% | -0.68 pt |
植生自然度
環境省 生物多様性センターの植生3次メッシュ(約1km)から引いた自然度。1 = 市街地、10 = 自然草原。調査は 1992-1996 年で、いまの土地被覆とは違いうる
χ² = 67.55(ラベルを入れ替えたときの平均 5.034)・p < 0.0005(2000 回の入れ替えで一度も観測値に届かなかった)・Cramér の V = 0.1632
この軸の値が取れなかった点: 温泉 42 点 / 対照 61 点。 集計から外しています(埋めていません)。
数の表
| 区分 | 温泉 | 温泉 % | 対照 | 対照 % | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1〜2(市街地・農耕地) | 528 | 41.31% | 699 | 55.52% | -14.21 pt |
| 3〜5(樹園地・二次草原) | 62 | 4.85% | 75 | 5.96% | -1.11 pt |
| 6(植林地) | 265 | 20.74% | 172 | 13.66% | +7.07 pt |
| 7〜8(二次林) | 334 | 26.13% | 222 | 17.63% | +8.5 pt |
| 9〜10(自然林・自然草原) | 57 | 4.46% | 55 | 4.37% | +0.09 pt |
| その他(裸地・水域) | 32 | 2.5% | 36 | 2.86% | -0.36 pt |
最寄りの湖沼までの距離
国土数値情報の湖沼データ 556 面の岸までの距離
χ² = 8.567(ラベルを入れ替えたときの平均 3.938)・p = 0.06847・Cramér の V = 0.057(V が小さいので、差はあっても分布の重なりは大きい)
この軸の値が取れなかった点: 温泉 3 点 / 対照 1 点。 集計から外しています(埋めていません)。
数の表
| 区分 | 温泉 | 温泉 % | 対照 | 対照 % | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〜1 km | 73 | 5.54% | 56 | 4.25% | +1.3 pt |
| 1〜3 km | 62 | 4.71% | 59 | 4.47% | +0.23 pt |
| 3〜10 km | 393 | 29.84% | 353 | 26.76% | +3.08 pt |
| 10〜30 km | 677 | 51.4% | 710 | 53.83% | -2.42 pt |
| 30 km 以上 | 112 | 8.5% | 141 | 10.69% | -2.19 pt |
この数の読み方
- ここにあるのは共起の記述です。温泉ができる原因を示すものではありません。
- 温泉の点は観光資源データの「温泉・健康」分類から取ったもので、源泉の台帳ではありません。10 都府県には 1 点もありません。対照も同じ偏りを持ちますが、 偏りが完全に打ち消せているとは限りません。
- 最寄りの活火山までの距離は地理的な距離です。近いことは、その温泉が火山性であることを意味しません。 実際、100 km 以上離れた区分では温泉と対照がほとんど同じ割合になっており、 差が出ているのは中距離の帯だけです。
- 標高の差も一方向ではありません。温泉は 200〜800 m の帯に寄る一方、1200 m 以上では対照のほうが多い(山頂や高原の観光地が対照に入るため)。 「高いところほど温泉がある」ではありません。
- 河川との近さがいちばん大きく出ますが、これは温泉が谷底や川沿いの平地にあることの裏返しでもあります。 対照に選んだ観光地点も人が行ける場所なので、地形の効果を完全に切り分けてはいません。
- 植生自然度で差が出るのは中ほどの段階だけです。温泉は市街地・農耕地に少なく (−14.2 pt)、植林地・二次林に多い(+7.1 / +8.5 pt)一方、自然林・自然草原では差がほぼありません(+0.09 pt)。 「自然が濃いほど温泉がある」ではありません。
- 植生の調査は 1992〜1996 年のもので、約 1 km のメッシュの代表値です。 いまの土地被覆とは違いうるうえ、1 km 四方を 1 つの区分で代表しています。
- 河川の距離は全 286,437 区間から測っており、細い流れも含みます。地図に描いている 1 級河川の直轄区間だけで測った値ではありません。